物流DXとは?物流業界が抱える問題とその解決に向けて
・物流DXの定義
・ドライバー不足
・EC市場拡大に伴う小口配送の増加
・IT化の遅れ・システムの老朽化
・業務効率化
・コスト削減
・配送状況の可視化
・ドライバー不足の解消
・ヒューマンエラーの防止
1.物流DXとは?
物流DXとは、文字通り物流業界におけるDXです。配送や輸送、保管、荷役、流通加工といった物流事業で発生する業務において、AIやIT機器を活用します。例えば、物流管理システム導入による物流業務の可視化や管理の効率化、ドローンを活用した新たな配送サービスなどが挙げられます。
DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、デジタル技術を用いてビジネスに変革をもたらすことです。単にITツールやデジタル技術を導入するだけでなく、組織やビジネスモデルを変革し、ビジネスでの優位性を確立する取り組みがDXです。
物流DXの定義
国土交通省では物流DXについて、デジタル化することで物流を変革すると記しています。
『機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること(物流DXにより、 他産業に対する物流の優位性を高めるとともに、我が国産業の国際競争力の強化につな げる)
◆既存のオペレーション改善・働き方改革を実現
◆物流システムの規格化などを通じ物流産業のビジネスモデルそのものを革新 』
2.物流DXの市場規模
物販系分野のBtoCにおけるEC化が進んでいる近年において、物流は物流業だけでなくあらゆる業種において重要な経営戦略の一部となっています。
また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う巣ごもり消費の影響で、2020 年の同市場規模は大幅に拡大し、この数年の伸長率が 1 桁台後半であったため、2019 年までの傾向の延長線で 2020 年の物販系分野の BtoC-EC 市場規模が推移したとの仮定を置けば、最大でも 11 兆円であったと推測されます。従って、巣ごもり消費が我が国の物販系分野の BtoC-EC 市場規模を少なくとも約 1.2 兆円底上げしたと計算できます。
引用:令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)(経済産業省)
3.物流業界が抱える問題点
・ドライバー不足
物流業界が抱える課題のひとつに、労働力不足が挙げられます。慢性的なドライバー不足に頭を悩ませ、人手不足の解消に四苦八苦している企業は少なくありません。
・EC市場拡大に伴う小口配送の増加
インターネットやモバイル端末が普及し、誰もが当たり前のようにインターネットショッピングを利用する時代になりました。また、新型コロナウイルスの感染拡大により外出を控える方が増え、ネットショッピング需要が高まった結果、小口配送が増加しました。
小口配送の増加が物流企業に与える影響は小さくありません。小口の荷物が数多く倉庫へ保管されるようになり、管理が複雑化した企業も見られます。また、小口配送はトラック積載率の低下を招き、業務効率の悪化にもつながります。
・IT化の遅れ・システムの老朽化
物流業界は、以前からIT化の遅れが指摘されていました。IT化に積極的ではない企業も多く、依然としてアナログな手法で業務に取り組んでいるケースも見られます。
また、システムの老朽化も課題のひとつです。老朽化したシステムは業務効率の低下だけでなく、業務の属人化も招きます。業務が属人化すると、特定の従業員しか業務を遂行できず、その従業員に突然休まれると業務が立ち行かなくなるおそれがあります。
データの集約や活用ができていない企業も少なくありません。物流業界では、部門ごとに独立したシステムを構築しているケースが多いためです。このような状況では部門間の緊密な連携が取れず、非効率の発生や業務負荷の増加につながります。
4.DXによる改善・解消できる問題点
DXへの取り組みによって、業務効率化やコスト削減などのメリットを得られます。また、配送状況の可視化や人手不足の解消、ヒューマンエラーの防止といった効果も期待できます。
・業務効率化
デジタル技術の導入によって、従来人の手で行ってきた業務の自動化や無人化を実現できます。簡単な作業や定型業務などをツール・システムに任せることで、従業員は人の手でしかできない業務に注力でき、業務効率化と生産性の向上につながります。
例えば、ピッキングシステムの導入は業務効率化に有効です。小口配送の増加によって複雑化した倉庫管理も、ピッキングシステムを導入すれば管理が容易になり、荷物がどこにあるのかも可視化できます。
・コスト削減
DXの推進はコスト削減にも有効です。例えば、物流に関する各種手続きを電子化すれば、紙を用いずデータでやり取りできるためコスト削減につながります。電子化によるペーパーレス化を進めることで、用紙代や印刷代、請求書を送る際の切手代などのほか、人的コストも削減できます。
・配送状況の可視化
DXによって配送状況の可視化が可能です。例えば、動態管理システムや配送管理システムなどを導入・運用すれば、車両の現在地や状況などをリアルタイムに把握できます。
ドライバーの現在地や配送状況を正確に把握できれば、管理者はそのときどきに応じた適切な指示を出せます。現在地を把握したうえでマップを確認し、最短で配送できるルートを指示する、といったことも可能です。
配送状況の可視化に伴い、ドライバーはより効率よく業務を遂行できます。その結果、顧客のもとへ従来よりも早く荷物を届けられ、顧客満足度の向上にもつながります。
・ドライバー不足の解消
物流業界が抱える大きな課題のひとつが、ドライバー不足です。常態化する長時間労働や賃金の低さなど、ドライバー不足の原因は多々ありますが、DXへの取り組みによりこうした状況の改善が見込めます。
例えば、AIドローンや自動運転技術を採用したトラックを導入すれば、人間のドライバーに代わって目的地まで荷物を運んでくれるため、人手不足の解消に役立ちます。
また、動態管理システムによる配送の最適化も、ドライバー不足の改善に有効です。管理者は、ドライバーの位置や配送状況をリアルタイムに把握できるため、そのときどきの状況に応じた適切な指示が可能です。より効率的に配送業務を行える環境が整えば、少ない人員でも業務を遂行できます。
・ヒューマンエラーの防止
物流業務においてヒューマンエラーはつきものです。物流倉庫でのピッキング業務を、未だに人の手で行っている企業は少なくありません。大量の荷物から目的の荷物を見つけ取り出す作業は、ミスが発生しやすく業務効率も低下します。
ピッキングロボットの導入によって、上記のようなミスの回避が可能です。人間のようにミスを犯さず、スピーディーに作業を進めてくれるため業務効率も高まります。従業員の負担軽減につながる点もメリットです。
5.物流でのDX事例
物流DXには次のような事例があります。
①大手運送会社A
大手運送会社Aでは成長戦略=DX戦略ととらえ、トータルロジスティクスの機能強化をすることで競争優位性を高めています。
『大手運送会社AのDX戦略は、社会・顧客の課題解決を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを、目的として掲げています。目的達成のため、「デジタル基盤の進化」「業務の効率化」「サービスの強化」の3つの施策に取り組んでいきます。 』
レガシーを脱却し、さらにDX投資を拡大することでアジャイル開発の加速、先端技術の活用を進めることで、3つの施策に取り組んでいます。
②大手運送会社B
大手運送会社Bは2021年度通期の営業収益が前年度と比較して108.9%増の921億円に達しました。この理由として、物販系eコマース市場の拡大以外に、DXやデータドリブン経営に取り組んだことにより、業務量予測に対してコストの適正化に成功しているといえます。
通常はDXを導入して1年ではっきりとした成果がでることは少なく、さらに成果が出ていることを決算報告で発表することはありません。大手運送会社Bが決算報告ではっきりと伝えることができたのは、DXを導入することを目的にせずテクノロジーをどう活用するかを事業方針に落とし込んだことが大きな要因です。この結果次の5つのデータ戦略を選択しDX推進をしています。
・需要予測の精緻化と、意思決定の迅速化
・アカウントマネジメント強化に向けた顧客データの完全な統合
・流動のリアルタイム把握によるサービスレベルの向上
・稼働の見える化、原価の見える化によるリソース配置の最適化・高度化
・最先端テクノロジーを取り入れたデジタル・プラットフォーム(データ基盤)
・デジタルプラットホームの構築と基幹システムの刷新 』
③物流のマッチングサービス
新しい物流システムとして近年注目されているのが、荷主と配送業者を結びつける物流マッチングサービスです。
物流マッチングサービスが注目される背景には、配送の需要が高まる中でドライバーの数が不足しているという実情があります。デジタルシステムを活用して物流業務を効率化させるために生まれたのが、物流マッチングサービスです。
6.まとめ
経済産業省がDXを導入することによって、企業の経営改革をもたらし、競合他社に対して優位性を持つことを推奨しています。物流においてもDXを導入して、改革することを国土交通省が進めています。
物流業務は業務内容が複雑であり、EC化が進むことでさらに担当者の負担が大きくなっています。そこで物流DXを導入することによって、業務の負担を減らし業務効率化につなげることができます。
また、物流マッチングサービスを利用することによって物流配送効率化がさらに図られます。