運送会社の配車係とは?
目次
■運送会社の配車係とは?
・仕事内容
・配車係の重要性
・配車係の向いている人材
コミュニケーション能力が高い人
ロジカルシンキングができる人
冷静な判断ができる人
■配車係と運行管理者の違い
・運行管理者に必要な資格
・運行管理者資格の取得までの流れ
基礎講習とは
一般講習とは
■庸車の見つけ方
・トラック協会などの集まり
・電話で繋がる
・求貨求車マッチングサイトの登録
■運送会社の配車係とは?
自動車運送事業者は、利用者や社会の信頼にこたえるため、安全で確実な輸送を行う義務があります。公共の道路を使い、一般の車や歩行者と混在して走行するなか、ハンドルを握るドライバーに最終的な安全確保の措置がゆだねられるため、ドライバーひとりひとりの健全な心身と高い安全意識が求められます。一方で、新規参入や台数制限などの規制緩和による過当競争や、一部の企業の安全管理の欠如による重大事故の発生などを受けて、安全に対する社会的要求が一層高まっています。その重要な職種のトラックドライバーの輸配送スケジュールを組むのが配車係となります。
トラック運送会社の配車係は、輸送ニーズに基づいてトラックの配車を管理する役割を担います。具体的な業務内容はその運送会社の状況によって異なる場合がありますが、一般的な業務は以下の通りです。
・仕事内容
- 受注管理 : 顧客からの輸送依頼や注文を受け付け、データベースや配車システムに登録します。依頼の詳細や要件を確認し、配車に必要な情報を把握します。
- 配車計画 : 配車計画の作成は、配車係のメインとなる業務です。配車係は、トラックの稼働状況やドライバーのスケジュールを考慮しながら、最適なルートや配車計画を立てます。効率的な輸送を実現するために、距離、荷物の種類、ドライバーの適性などを考慮します。配車係は配送先や荷量・荷姿などの荷物情報、交通情報など多くの情報を考慮して、複数の配送先や複数の車両から最適な組合せを考えた計画を作成しなければなりません。
さらには各ドライバーの適性ややる気、能力を考えてバランスの良い配車組みを行う繊細さも求められます。このように配車係は、さまざまな条件を考慮しながら効率活最適な配車組みを行わなければいけないため、非常に高いノウハウと経験が求められます。
- 運行状況の進捗管理:ドライバーの運行状況を把握しておくのも配車係の業務であります。近年ではGPSを使った動態管理システムを利用して、ドライバーを適切に管理する役割が重要となっています。動態管理システムによって、配車係は自社ドライバーの位置や配送状況を以前より容易に、かつ正確に把握することが可能になりました。
- トラックの手配 : 配車係は、輸送ニーズに応じてトラックを手配します。利用可能なトラックやドライバーの情報を確認し、適切なトラックを選択します。トラックの予約や手配、必要なドキュメントの作成なども担当します。自社のトラックで輸配送できない場合などは協力会社などの庸車を見つけてくるのも仕事です。
- 連絡調整 : 配車係は、ドライバーとの連絡調整を行います。配車情報やルートの詳細、荷物の取り扱いに関する指示などを伝えます。また、顧客や他の関係者との連絡調整も行い、スムーズな輸送を確保します。
- 労働時間の管理:物流業界でも現在コンプライアンス遵守や働き方改革が進んでいます。2024年4月から残業時間の規制が厳しくなりますので、ドライバーが過重労働にならないような適切な配車組みをするなどして、ドライバーの休憩時間や労働時間を適切に管理しなければなりません。
- 問題解決 : 配車係は、トラックの遅延、トラブル、交通渋滞などの問題が発生した場合に迅速かつ適切な対応策を見つけます。ドライバーや顧客との連絡を取り、問題を解決するための手配や代替案を考えます。
配車係の仕事は、トラック運送会社の重要なポジションであり、スケジュール管理やコミュニケーション能力が求められます。効率的な輸送や顧客満足度の向上に貢献する役割です。
・配車係の重要性
配車業務は物流・運送会社のコア業務だと言えます。自社の売り上げや利益率に直結し、さらには、トラックドライバーの労働時間や働き方を適正にすることにも関わります。収益増減に加え、トラックドライバーの定着率にも関わる経営を左右する業務です。
ただ一方では、課題が生じやすい側面も持ち合わせます。配車業務には、多くの経験や知見が不可欠なのです。その特性上、職人的な業務となりやすくベテランの配車係に依存してしまう傾向にあります。そのため、配車係の過重労働や属人化、後継者不足などにつながりやすく、実際に課題を抱えている企業は少なくありません。
・配車係の向いている人材
配車係に向いている人には3つの特徴があります。
- コミュニケーション能力が高い人
配車係は、ドライバーや荷主など様々な人と数多くコミュニケーションをとらなければならない職種です。そのため、コミュニケーション能力が高い・自信があるという人は配車係に向いていると言えるでしょう。
配車係は特にドライバーに指示通り動いてもらわなければいけませんのでコミュニケーションが上手く取れず思い違いなどがあれば誤配送や配車変更に繋がります。
また、場合によっては荷主からの急な変更や、トラック故障などのトラブルでドライバーに無理を言わなければならない状況があります。日々気持ちよく仕事をしてもらうためにも、普段からドライバーとコミュニケーションをとり信頼関係を構築し、継続してドライバーをしてもらうためにもコミュニケーション能力は重要になります。
さらに、繫忙期になると配車係は他の運送会社に庸車を頼む事も多いので、協力会社と良い関係を築いていく事にもコミュニケーション能力が必要不可欠と言えるでしょう。
- ロジカルシンキングができる人
配車係の核となる業務である配車計画の作成業務は、いかに労働時間の制約・荷主の運行条件などさまざまな事を考慮しながら効率の良い配車を組んでいくかということがポイントになります。そのため、ロジカルシンキング(論理的思考)を得意としている人は配車係に向いています。
近年はこの論理的思考を用いて配車を組むという作業を自動でやってくれる自動配車システムというものを導入する運送会社も徐々に増えてきています。
ただ、自動配車システムを使用する運送会社の場合でもドライバーの健康状態を目視で確認して、その日の健康状態により配車計画を立てなければいけませんので機会に頼りつつもしっかり配車係が管理することも重要です。
- 冷静な判断ができる人
配車係は判断に迫られる場面の多い職種です。配車業務はじめ、トラック故障・誤配送・事故などのトラブルや道路渋滞等のイレギュラーなど様々な不測の事態にも現場の状況を冷静に判断し最善策を講じなければなりません。
また、荷主とやりとりをする際や、ドライバーとやりとりをする際にも、すべての要望を受け入れることは不可能ですので、さまざまな意見や要望を取捨選択する判断力が必要となってきます。判断力に自信のある人は、配車係の業務においてその能力がアドバンテージとなるでしょう。
■配車係と運行管理者の違い
配車係と運行管理者の大きな違いは「国家資格を持っているかどうか」です。
運行管理者は国家資格「運行管理者資格」を取得しており、また在職中の運送会社から選任された者の事を言います。
運送会社の大きさに関わらず運行管理者は最低一人は必要です。運行管理者の人数は運送会社のトラック台数によって変わります。
配車係は「運行管理者資格」が必要ではありませんが、取引先などから依頼された輸配送をドライバーに割り振りすることが主な業務です。トラックの点検・タイヤ交換・ドライバーの休日申請・トラック規格や形状などさまざまな事を加味してスケジュールを組まなければいけません。
まとめると配車係は輸配送が円滑に進むようにドライバーへ適格な指示を出すのに対し、運行管理者は配車係が作成したスケジュールが労働基準法に違反していないかなど運行が安全に行われるために指導監督する事が仕事です。
一般的に配車係が運行管理者資格を取得している事が多いですが、その理由は配車係と運行管理者が別の人である場合、配車係が配車した後に、運行管理者が手直しをしなければいけない事があるため配車係が運行管理者資格を取得して、労働時間の管理を行えば二度手間にならずに済むためです。
・運行管理者に必要な資格
こうした重要な役割を担っている運行管理者になるためには、自動車運送事業の種別に応じ、旅客、または貨物の「運行管理者資格者証」の交付を受けることが必要ですが、それには、次の2つの方法があります。
【試験による方法】
資格者証の交付を受けようとする事業の種類と同じ種類の運行管理者試験に合格する。
(受験資格)
次のいずれかの要件を満たしていること。
①運行管理に関して1年以上の実務経験を有する。
②基礎講習を修了している。
【実務経験などによる方法】
事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務について、国で定めた一定の実務の経験その他の要件を備える。(一般貸切旅客自動車運送事業を除く。)
・運行管理者資格の取得までの流れ
【基礎講習とは】
運行管理を行うために必要な法令および業務等に関する必要な基礎知識の習得を目的とされる方が対象です。
基礎講習を受講することにより、「運行管理者試験」の受験資格を得ることができます。また、基礎講習を修了した方を運行管理者の「補助者」に選任することができます。
法改正により、運送事業者において新たに運行管理者に選任され、 過去に一度も基礎講習を受けていない場合は、選任届出をした年度内に、基礎講習を受講することが義務付けられました。
【一般講習とは】
既に運行管理者として選任されている方は、2年ごとに1回の受講が義務付けられています。また、新たに運行管理者として選任された方は、年度内に受講する必要があります。
■庸車とは?
庸車(ようしゃ)とは、運送会社の配車係や荷主が繁忙期や人員不足などで荷物を運搬する車両や人員が不足しているときに、他の運送業者に委託して荷物の配送を行ってもらうことを指します。
庸車は運送会社から別の運送会社に輸配送を委託することです。また、車両のみを借りる場合もあり、その借りた車両のことを庸車と呼ぶこともあります。
基本的に運送会社や運送部門を持つ企業は、日常の輸配送業務を行うために十分なドライバーとトラックを保有しています。しかし、どの運送会社にも繁忙期というものがあります。
普段は自社のトラックやドライバーを使用すれば十分な仕事量でも繁忙期になるとトラックやドライバーが不足するといったケースが生まれてしまいます。この不足分を補うために庸車を利用しています。
また、運送部門を持つ企業も普段から全て自社のトラックやドライバーで輸配送するのではなく、何割かを庸車に委託しているケースがあります。
運ぶ荷物によっては専門性が必要なことがあるので、専門性が必要のない荷物は自分たちで、専門性のあるものは委託するといった方法をとる企業もあります。
■庸車の見つけ方
繁忙期に自社のトラックでは賄いきれない場合には、庸車を見つけなければなりません。
既存の協力会社に連絡して庸車を見つけることができればいいのですが、運送業界の人手不足は加速する一方であるため、今後庸車が見つからない事が多くなります。
新たな協力会社を見つける事が必要不可欠となっていきます。
以下は新規協力会社を見つける方法です。
・トラック協会などの集まり
全日本トラック協会に入会すると総会などの集まりでさまざまな運送事業者の方と会う機会があります。
そこで名刺交換をして協力会社を見つけることも可能ですが、このような集まりには現役を引退した社長たちも中にはいるので実際にやりとりする配車係までたどり着くには紹介してもらう手間もあります。
・電話で繋がる
ホームページやネットで検索して運送会社に直接電話することもできますが、日々業務に追われている配車係は営業の電話などに抵抗がある人が多いです。
電話で庸車を探していて相手が輸配送の仕事を探している運送会社であればいいのですが、そうでない事の方が多くありますので、自社にあった協力会社を見つけるためには何度も電話しなければいけなく、時間のロスになる可能性が高いです。
・求貨求車マッチングサイトの登録
最近では、求貨求車マッチングサイトが多くあります。求貨求車マッチングサイトの種類もさまざまで、月額利用料のみ費用が掛かり、その他の手数料はすべて無料の求貨求車マッチングサイトや運営側が中間に入り手数料等を取るマッチングサイトがあります。
求貨求車マッチングサイトの種類は大きく分けると以下の3種類あります。
①掲示板型求貨求車マッチングサイト
②エージェント型求貨求車マッチングサイト
③シェアリングエコノミー型求貨求車マッチングサイト
このように物流マッチングサイトにはさまざまな種類のものがありますが、おすすめは①掲示板型マッチングサイトです。
理由は、協力会社を探す際には②③では直接協力会社を探すことができないためです。②③のシステムは運営会社が中間に入り、相手企業が分からない様になっている事が多いため新規協力会社を見つけることができません。
その点、掲示板型求貨求車マッチングサイトでは月額利用料は掛かるものの、直接荷主と取引することができ、運賃交渉もできるためあなたに合った協力会社を見つける事ができます。
最近の掲示板型求貨求車マッチングは機能が充実しており、メッセージ機能や自動マッチング表示機能が付いている求貨求車マッチングがあります。
掲示板型マッチングサイトでおすすめなのが無料お試し期間が長いITトラックスです。
当マッチングサイトは登録から12か月間完全無料でお試しいただけるので協力会社を無料で見つけることが可能です。
■配車係が今後考えなければならないこと
未来はどうなるか分かりませんが、運送会社が存続する限り配車業務は無くなる事はありません。
AIの技術・トラックの自動運転化などにより業務形態は変わってきますが、人の手でなければならない部分もあると思います。
以下は配車係が今後考えていかなければならないことです。
- 自動化と技術の進歩
自動運転技術の進歩や物流管理システムの改良により、将来的には一部の配車業務が自動化される可能性があります。例えば、自動運転トラックやドローンによる配送などが導入されることで、一部の配車業務が変化するかもしれません。
自動運転技術の進歩により、将来的には自動運転トラックが商業的に広く使用される可能性があります。自動運転技術は人間のエラーや疲労などの要因を排除し、より安全な輸送を実現することが期待されます。また、長時間の運転や過酷な労働条件から運転手を解放することができます。運転手は監視や緊急時の介入などの役割に集中することができます。
ドローンは小型貨物や緊急の輸送・配送に適しており、特に都市部や地理的にアクセスしにくい地域での物流に活用される可能性があります。例えば、医薬品や救急物資の迅速な輸送・配送などが挙げられます。
- データ分析と予測
配車係はデータ分析や予測モデリングのスキルを活用して、効率的なルートや配車計画を作成する役割を果たすことが重要になるでしょう。リアルタイムのトラフィック情報や需要予測などを分析し、最適なルートや適切な輸送手段を選択する能力が求められるでしょう。 - 環境への配慮
持続可能な輸送と環境保護への関心が高まる中、配車係は環境への配慮を考慮した輸送計画を策定する必要があります。例えば、エコフレンドリーな車両の導入や輸送ルートの最適化などが重視されるかもしれません。 - 顧客サービスの重要性
配車係は顧客とのコミュニケーションを円滑に行い、スムーズな輸送サービスを提供する役割を果たす必要があります。顧客のニーズや要望を理解し、迅速かつ正確な情報を提供することが求められるでしょう。
■まとめ
総合的に言えば、将来の配車係はより技術的なスキルや環境への配慮、顧客サービスの向上などに重点を置く必要があると考えられます。自動化の進展により一部の業務が変化する可能性もありますが、配車係の専門知識や判断力がさらに重要視されるでしょう。
また、運送会社の配車係には、効率性の追求、柔軟性と適応性、コミュニケーション能力、チームワーク、そしてプロフェッショナリズムという重要な考え方が求められます。効率的なリソース管理と計画、予測不可能な状況への素早い対応、円滑なコミュニケーションと情報共有、協力的なチームワーク、そして高い専門知識と責任感に基づくプロフェッショナルな態度を持つことで、配車係は優れたサービスと顧客満足度を実現できます。
さらに、効率的なリソース管理に注力し、車両やドライバーの能力を最大限に活用します。また、予測不可能な状況にも柔軟に対応し、天候不良や道路渋滞など急な変更や問題に対して適切な対策を考えます。
円滑なコミュニケーション能力を持ち、ドライバーや顧客との間で要件や指示を明確に伝え、情報共有を行わなければいけません。
上記のように運送会社の配車係はさまざまな事を考えながら業務にあたらなければなりません。また、緊急時には配車を入れ替え、ドライバーの管理もしなければならずとても大変な職種です。
ですが、配車を効率的に回し、ドライバーの労務時間内で大きな利益を上げる事ができれば、とてもやりがいのある仕事です。運送会社の主要ポジションの配車係を経験していれば、転職時にもより有利な条件で転職が可能ですので、興味のある方は一度、配車係の業務に挑戦してみてはいかがでしょうか。