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トラック運転者の改善基準告示が変わります

目次

■改善基準告示とは?  

  ・改正の経緯  

  ・改善基準告示の対象者 

■改正改善基準告示の内容  

  ・拘束時間(1年・1か月・1日)

     ・1日の休息時間

  ・運転時間

  ・ 連続運転時間

  ・特例

    ①分割休息特例

    ②2人乗務特例

    ③隔日勤務の特例

    ④フェリー特例

  ・予期しえない事象

 ■ 時間外労働の上限規制と残業割増賃金率

 ■労働基準監督署による荷主等への要請

 ■まとめ

■改善基準告示とは?

「自動車運転者の労働時間等の改善の為の基準」(改善基準告示)は、トラック運転者の労働時間等の労働条件の向上を図るため、労働基準法では規制が厳しい拘束時間(労働時間+休憩時間)や休息時間(勤務間インターバル)、運転時間等の基準に定めたもの(厚生労働大臣告示)です。

令和4年12月に改正され、令和6年4月から新しい告示が適用となり、遵守できないトラック運送事業者は行政処分の対象になります。

・改正の経緯

道路貨物運送業は、脳・心臓疾患による労災支給決定件数が全業種において最も多く、トラック運転者の長時間・過重労働が問題となっています。

加えて、働き方改革関連法の国会附帯決議により、過労死等の防止の観点から、改善基準告示の改正が求められました。また、働き方改革関連法により、令和6年4月から時間外労働時間の上限規制が年960時間となります。

・改善基準告示の対象者 


営業用トラック(緑ナンバー)運転者に加えて、自家用トラック(白ナンバー)運転者も改善基準告示の対象となります。
労働者に該当しない個人事業主は、直接、改善基準告示の対象ではありませんが、国土交通省が告示で定める基準により、実質的に改善基準告示の遵守が求められます。

■改正改善基準告示の内容 

改善基準告示の内容は「拘束時間」「休息時間」「連続運転時間」が改正されます。
また、「特例」の条件も設けており
「分割休息特例」では連続9時間以上の休息時間を与えることが困難な場合の特例です。
「2人乗務特例」はトラック運転者が同時に1台のトラックに2人以上乗務する場合の特例。
「隔日勤務の特例」は業務の必要上、やむを得ない場合。
「フェリー特例」はフェリーを使用して運行する場合などさまざまな特例がありますので、自社の運行状況に応じて特例を活用して改善基準内で運行するようにしなければいけません。

・拘束時間(1年・1か月・1日)

【原則】

・1年の拘束時間:3,300時間以内(新設)
・1か月の拘束時間:284時間以内(改正)

【例外】

労使協定を締結することで、年間の総拘束時間3,400時間を超えない範囲で1か月の拘束時間を310時間まで延長(1年に6か月まで)することができます。(改正)
なお、1か月の拘束時間が284時間を超える月が3か月を超えて連続してはいけません。また、1か月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努めなければいけません。

例えば・・・
・拘束時間が月284時間を12か月連続する事はできません。
 284時間×12ヵ月=3,408時間となり、3,300時間を超えてしまいますので違反となります。
・拘束時間が月284時間以上になる月が4か月連続で続くこともできません。
・1か月の時間外・休日労働時間100時間が過労死ラインとなっていますので、例外の場合でも時間外・休日労働時間数が月100時間未満となるように努めなければいけません。

【原則】

・1日の拘束時間:13時間以内(上限15時間まで)
 なお、1日の拘束時間が14時間を超える日は、1週間で2回までが目安となっております。

【例外】

宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、16時間まで延長することができます(週2回まで)
ただし…1週間の間で、長距離貨物運送と長距離貨物運送以外の運行が混在する場合、例外は使えません。

※長距離貨物運送とは、営業所を出てから営業所へ戻るまでの距離が450㎞以上の輸送です。


・1日の休息時間

【原則】

休息期間は、勤務終了後、継続11時間以上となるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回ることはできません。

【例外】

・宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、継続8時間以上とすることができます(週2回まで)
・例外による場合、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与えなければなりません。
(例外による場合は、自宅での休息を継続12時間以上)

※1週間における運行が全て長距離貨物運送(営業所を出てから営業所へ戻るまでの走行距離が450㎞以上)で営業所を出てから営業所へ戻るまでにおける休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合


・運転時間

・2日平均 1日9時間以内

・2週平均 1週間44時間以内

【1日平均の考え方】

1日あたりの運転時間の計算にあたっては、特定の日を起算日として2日ごとに区切り、その2日間の平均を計算します。

【2週平均の考え方】

起算日からの2週間のうち、1週間目と2週間目の平均で44時間以内にしなければなりません。

・連続運転時間

【原則】

・連続運転時間は、4時間以内
・運転の中断時には、原則休憩を与える必要があります。また1回おおむね連続10分以上で合計が30分以上の中断が必要です。

【例外】

・サービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)・道の駅に駐停車できないことで、やむを得ず4時間を超える場合は、4時間30分まで延長する事が可能です。

・特例

改正改善基準の拘束時間・休息時間・運転時間等の基準を満たすことができない場合のために下記の「特例」を設けています。

①分割休息特例

連続9時間以上の休息期間を与えることが困難な場合

・分割休息は、1回あたり継続3時間以上
・休息期間の合計は、2分割した場合は合計10時間以上、3分割した場合は合計12時間以上
・休息期間が3分割の日が連続しないよう努めなければなりません。
・一定期間(1か月程度)における全勤務回数の2分の1が限度となります。

②2人乗務特例

トラック運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合
車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合、最大拘束時間を20時間まで延長し、休息期間は4時間まで短縮できます。
設備(車両内ベッド)の要件を満たす場合、拘束時間を24時間まで延長できます。ただし、運行終了後、継続11時間以上の休息期間を与えることが必要です。さらに、8時間以上の仮眠時間を与える場合、拘束時間を28時間まで延長できます。

※設備(車両内ベッド)とは、長さ198㎝以上、かつ幅80㎝以上の連続した平面であり、かつクッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであること。

③隔日勤務の特例

業務の必要上、やむを得ない場合、2暦日における拘束時間は21時間を超えてはなりません。
また勤務終了後、継続20時間以上の休息期間を与えなければなりません。
仮眠施設で、夜間4時間以上の仮眠を与える場合、2暦日の拘束時間を24時間まで延長できます。(2週間に3回まで)
2週間の拘束時間は126時間(21時間×6勤務)を超えることができません。

④フェリー特例

フェリー乗船時間は原則として休息期間となります。
減算後の休息期間は、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ってはなりません。
フェリー乗船時間が8時間を超える場合、原則としてフェリー下船時刻から次の勤務が開始となります。

・予期しえない事象

事故、故障、災害等、通常予期しえない事象に遭遇し、一定の遅延が生じた場合には、客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間の規制の適用にあたっては、その対応に要した時間を除くことができます。

※1年や1か月の拘束時間、2週平均の運転時間からは除くことはできません。

【具体的な事由】

○運転中に乗務している車両が予期せず故障した場合

○運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した場合

○運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖された場合、道路が渋滞した場合

○異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった場合

勤務終了後は、通常通りの休息期間を与えなければなりません。

※休息期間は、勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本に、継続9時間を下回ることは認められません。

■時間外労働の上限規制と残業割増賃金率

・時間外労働が月60時間を超える場合の残業割増賃金率は令和5年3月31日までは大企業50%、中小企業は25%、令和5年4月から大企業・中小企業ともに50%に変更。

・令和6年4月から時間外労働が年960時間の上限規制も始まります

また、将来的には時間外労働の上限規制が一般職と同じ年間720時間になることも今から念頭において対策する必要があります。

■労働基準監督署による荷主等への要請

・改善基準告示違反になるような長時間の荷待ちが疑われる場合は、労働基準監督署から荷主等に対して「要請」を行い、厚生労働省から国土交通省に情報提供を行って、国土交通省から荷主等に対して法に基づく「働きかけ」等を行うとのことです。

■まとめ

2024年4月からのトラック運転者の改善基準告示が変更になり、トラック運転者の労働時間や運転時間を適切に管理することが重要になってきます。

長時間労働や過度の疲労は、交通事故のリスクを高めるだけでなく、ドライバーの健康や安全にも影響を与えます。運転時間制限や適切な休息時間の確保、労働時間の計測と管理など、規制やガイドラインの導入が求められています。

現在、トラック運転者の労働時間が長くなっている背景にはこのような問題があります。

・恒常的に長い荷待ち時間
・無理な到着時間の設定
・手荷役(手作業)での積み降し作業
・非効率な集荷や配送

では実際にどのような対策に取り組む必要があるでしょうか?

・予約システムの導入
・納品日時の分散
・高速道路利用促進
・フェリー運行の導入
・中継輸送の導入(積込・荷降ろし場所の集約)

技術の進歩によって、トラックドライバーの作業効率や安全性を向上させることができます。運転支援システムや自動運転技術の導入により、ドライバーの負担を軽減し、作業の効率化を図ることができます。また、デジタルプラットフォームやモバイルアプリの活用により、業務の管理やコミュニケーションの効率化も可能です。

このように、運送会社はさまざまな課題をひとつずつ解決していき法律を守って事業をする必要があります。大変な世の中ではありますが、協力会社と繋がって自社にあった貨物案件・トラック空車情報を共有していき乗り越えていきましょう。
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